
近年、「不登校から大学進学を果たした」という話は、以前よりずっと目にするようになりました。通信制高校やフリースクール、オンライン学習など多様な学びのルートが整備され、以前なら「もう進学は無理かも」と思われていた道に、光が差すようになってきています。
一方、その先、大学進学後の壁については、あまり語られることがありません。
私は、不登校から大学進学した経験を持つひとりです。そして、私の周囲にも似たようなルートを歩んだ友人がいます。けれど現実には、私を含めそのほとんど全員が進学後、何らかの不適応や問題に直面しました。そして、そのうち数人は途中で退学という選択をせざるを得なかったのです。
もちろん、これは私の身の回りのごく限られた話であり、すべての不登校経験者に当てはまるわけではありません。
ただ、不登校からの大学進学は「ゴール」ではなく、むしろ新たなスタートラインにすぎないということは、あまり語られていない現実のひとつだと思います。
なぜ「不適応」が起きるのか?
この問いに対する答えは、正直なところ「人それぞれ」です。
そもそも、大学進学後に問題を抱えるのは不登校経験者に限った話ではありません。高校までの価値観が通じず、人間関係に悩んだり、学業や生活リズムについていけなかったり──大学という自由な空間は、同時に多くの責任と自己管理を求めてくる場所でもあります。
それでもやはり、私の場合は不登校という過去が影響している部分が大きかったです。
私が大学で“つまずいた”理由
私の場合、理由は大きく2つあります。
1つは、規則正しい生活への適応ができなかったことです。
不登校になってから生活習慣が大きく崩れました。15歳から18歳までは週に4〜5日、朝からのアルバイトもしていましたが、夜になると遊びに出かける癖が抜けず、夜型の生活がすっかり板についてしまっていました。
そんな生活リズムのまま、電車通学と朝からの授業が続く大学生活に突入した私は、当然のように心身の体調を崩し、出席にも支障が出始めました。
2つめの理由は、やはり集団が苦手だったことです。
中学生の頃に不登校になったきっかけも、実はここにありました。小学生の頃からみんなで同じダンスをするとか、同じものを作るとか、周りと一緒に行動することに違和感を感じていました。だから、大学入学後もみんなで同じ時間割をつくるとか、同じ授業を受けるとか、そういうことに苦手意識が強くありました。
もちろん、大学の友達は皆優しくて、思いやりのある子ばかりで不満はありませんでした。ただ私から見ると、周囲の学生たちは、どこか「別の世界の人たち」のように見えました。彼らは高校では学業と部活に勤しみ、文化祭などの学校行事を楽しみ、受験を乗り越えてきた“ちゃんとした”学生たちでした。私とは価値観も考え方も違って見えて、なんとなく“ズレ”を感じてしまいました。自分から壁を作っていたのかもしれません。そんな意識も相まって、その集団にいることが苦しくなってしまったのです。
自分の「弱さ」と向き合った時間
そんな違和感を感じながらも、自分の心の叫びに気づかないフリを続けた結果、私はだんだん精神的に不安定になっていきました。学校にいるだけで涙が出てきてしまうようになり、体が重く朝起きることも苦しくなっていきました。数日休んでも状況が良くなる気配はありませんでした。
結局、大学2年生の終わりに休学を決意しました。
休学中は、毎日顔を合わせる仲間がいないことにさみしさもありましたが、結果として「自分に集中できる時間」が増えたのは大きかったです。集団の中にいると自分を押し殺してしまうけど、1人になり、自分自身と改めて向き合えたことで、自分の本当にやりたいことや、好きなものが見えてきて心が軽くなっていきました。
復学後気づけば、学部の垣根を越えて授業を履修したり、ふとしたきっかけで海外に行くチャンスをつかんだり──。それまでの自分がどこか他人に合わせようとしていたのに対して、休学後は「自分の本心」に目を向けることができるようになりました。
「変わり者」は変わらなくていい
昔から「変わり者」と言われることが多かったです。正直、学生時代はそれがコンプレックスでもありました。でも大学での経験を通して、「ああ、自分って本当に変わってるんだな」と、ようやく受け入れられるようになりました。
無理に普通になろうとすることが、自分を苦しめていたのです。
それ以来、私は「集団に合わせようとする努力」をやめました。自分をそのまま受け入れてくれる場所、あるいは自分と同じように“変人”が多い場所を選ぶようにしています。変人大好き。
もちろん、どんな集団にも「この人とは合わないな」と思う人はいます。けれど、同時にどんな場にも、自分と似たような感性を持つ人が1人や2人は必ずいて、そういう存在を見つけるセンサーを働かせることを、私は大切にしています。
最後に
不登校から大学進学を果たしたけれど、大学生活に馴染めずまた体調を崩してしまう人は少なくないと思います。
「またか」「やっぱり自分はダメなのかな」
と自分を責めてしまったりするのではないでしょうか。
私も長い間自分を責め続けましたが、大学で休学した半年間は自分の人生において必要な時間だったと思います。
こう思えたのも、少し時間が経ってからでしたが。今日明日の感情に振り回されないように、急がずに生きていきましょうね(^^)
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